神様のパズル

神様のパズル (ハルキ文庫)

神様のパズル (ハルキ文庫)

「宇宙は『無』から生まれた」と、彼は言った。「すると人間にも作れるんですか? 無なら、そこら中にある――」

 この一文だけで、面白いなと思った人にはお勧めできます。ジャンルは近代SF、青春小説。
 第3回小松左京賞受賞作で、映画化とゲーム化も決定しているらしいですが、まあそこらはどうでもいいです。
 表紙イラストがライトノベル調なので、キャラクタ小説であるかのようにも思えますが、実際に読んでみるとそうでもありません。むしろキャラクタにはあまり魅力がないとさえ言えますが、そんなことよりも物語のテーマが面白い。

「あなたは何とも思わないのですか?」
「え?」
「宇宙がどうしてできたかも知らずに生きているということが。そしてこんな根本的なことも分からずに死ななければならないということがですよ」

 理系の専門的な話はぜんぜん分からないけれど、こういう言葉にされると強く興味が湧いてくる。だからって勉強する気にはなれないわけだけど、知りたい気持ちはよく分かる。

キリハラキリコ

キリハラキリコ

 先月のことだけど、本屋に行ったら、キリハラキリコが本になっていた。
 ご存じのない人だらけでしょうが、キリハラキリコとは数年前、今は無きWebサイト『怠惰な堕胎』にて、ほぼ毎日のように更新されていた連載小説です。内容としては、キリハラキリコという少女(中学生か高校生か不明)が書くシュールな日記。
 プロになった事は知っていたけれど、出版されていたとは知らなかった。
 もちろん購入、読了しました。
 新たに加わったお話もあるみたい(ぜんぶ記憶してるわけじゃないのではっきりしませんが)だけど、終わりかたが微妙です。連載中は工場編(そういう区分があるわけではない)の途中までやっていたので、そこまで書かれているのかと思ったらそうでもないし、名前忘れたけど良いキャラだったキリコの親友も出てこない。一部のお話が完全に切り取られているのが、ちょっと残念です。
 続編が出るのならいいんだけど、単作として考えるとどう評価されるのかよく分かりません。

レクリクラモカカリ

カクレカラクリ?An Automaton in Long Sleep
 カクレカラクリを読んでいる。現在第四章。森さんの小説はいつも読むのに時間がかかる。
 コカコーラ120周年記念とのコラボ、ということらしいけれど、まあ単に作品中にコーラが何度も出てくるというだけ。この作品は始めから実写ドラマ化が決定したうえで書き下ろされたもので、9月13日に放送予定。一応、森作品としては初の映像化とのこと。
 森さんの文体というか、キャラクタの台詞回しはわりと独特なので……文章であることをよく自覚している文体とでもいうか。そんな感じなので、実際に役者さんが言葉にして使うものとしては違和感が出てしまうと思う。そこらはたぶん、適当に脚本の人がなんとかしてるんだろう。そうすることで森作品らしさが失われるとしても、メディアミックスというのはそういうものなので仕方ない。劣化や変色を免れないという意味で、オリジナルに勝るコピーはない。コピーの手法そのものが、文章から映像という無茶な試行なのだし、補わなくてはならない要素が多すぎる。
 ということで、始めからそれぞれが独立した別個の創作品であると認識していれば、なんら問題はないと思う。そんな風に見る人はあまりいないだろうけれど。
 それにしても、森さんの作品に出てくる女性像はどことなく偏ってる感がある。男性像もまあ、いくつかのパターンに当てはまるけど。あまり人種の多様性を書くことは上手くないのかも。
 とはいえ、どんな作家でもある程度の偏りは避けられないし、それが作風とか個性とか呼ばれるものの源になったりもするので、一概に多様であればいいとも言えない。むしろ売れるためにはパターン化させるのが得策だと思う。

 過去のエントリを削除しました。すっきり。